【東急バスのインバウンド広告事例】東京都内の訪日外国人にアプローチ。観光バスの集客を改善した広告戦略

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執筆者 Location AI株式会社 マーケティングチーム
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東京を訪れる外国人旅行者は増え続けています。
一方で、観光サービスを提供する事業者にとっては、限られた予算のなかで、どのように旅行者に知ってもらい、旅程に組み込んでもらえるかが大きな課題です。

東急バス株式会社は、渋谷・新宿歌舞伎町を発着する屋根のない2階建て観光バス「SHIBUYA STREET RIDE(SSRIDE)」の集客に、Location AIのインバウンド広告を活用しています。

運行開始当初は観光バスの認知度が低く、乗客数が伸び悩んでいました。なかには乗客がゼロの日もあった便があり、利用促進が課題となっていました。そこで取り組んだのが、位置情報データを活用した訪日外国人向けの広告配信です。

乗り場のある渋谷周辺に限定せず、東京都内に滞在する訪日外国人旅行者へ広くアプローチ。
さらに、実際の予約データから台湾からの旅行者に着目し、配信対象を見直してきました。

こうした広告施策を継続するなかで、以前は利用が伸び悩んでいた朝の便にも変化が見られ、乗車状況が大きく改善しました。

本記事では、東急バス株式会社 運輸事業部 計画部の式守 昇様、恒吉 剛様に、インバウンド広告を導入した背景や配信戦略、集客改善に向けた取り組みとその手応えについてお話を伺いました。

この記事のポイント
  • 課題: 観光バスの認知度不足。ホテルのリーフレットやポスターに加え、訪日外国人へ直接アプローチできる方法を検討
  • 施策: 東京都内全域の訪日外国人を対象に広告配信し、予約データをもとに台湾からの旅行者への訴求を強化
  • 成果: 台湾向け広告では高い反応が見られ、乗客ゼロの日もあった新宿発の朝の便で利用状況が大きく改善
INDEX

東急バス「SHIBUYA STREET RIDE」とは?

「SHIBUYA STREET RIDE(SSRIDE)」は、東急バスが2023年3月に運行を始めた定期観光バスです。コンセプトは、渋谷の奥深い世界へ案内する「カルチャーコンシェルジュ」。屋根のない2階建てバスで、渋谷スクランブル交差点や原宿、表参道などを巡りながら、多言語の音声ガイドと車内モニターで渋谷の歴史と魅力を紹介します。

渋谷を象徴する建物やモニュメントを描いた車体とカラフルな座席は、街を歩く人の目も引くデザインです。
乗車した人には、降りたあとに楽しめるデジタル街歩きガイドもプレゼントされます。

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「SHIBUYA STREET RIDE(SSRIDE)」の車両(写真提供:東急バス株式会社)

恒吉様:

渋谷は、東急グループ全体にとって核となるエリアです。
「SSRIDE」は、日本人・外国人を問わず、渋谷での回遊や滞在を促すことを目指して運行を始めました。

観光バスの認知度不足が課題。インバウンド広告を導入した理由

式守様:

私が担当を引き継いだのは2023年の秋です。運行を始めて間もない時期で、何よりも「SSRIDE」そのものの認知度がまだ低く、乗客数が伸び悩んでいました。まずは「こういうバスがある」と知ってもらわなければ始まりません。限られた予算のなかで、どうすればバスの存在を多くの方に届けられるかが一番の課題でした。

当時から日本人よりインバウンドのお客さまのほうが多く、そこをさらに強化したいとも考えていました。

ところが、インバウンド向けの施策は、渋谷・新宿・赤坂・六本木などのホテルにリーフレットを置く程度しかありませんでした。駅へのポスター掲示も検討しましたが費用が高く、しかも発着場は別の鉄道会社の沿線に近い立地でハードルが高かったため、駅の掲示に頼らず、効果的にアプローチできる方法を探していました。

Location AIのインバウンド広告を知ったきっかけは?

式守様:

SNSを見ていたときに、フォローしていないアカウントの広告が出てきたことです。「なぜこれが表示されるのだろう」と疑問に思って調べ、位置情報を使ったジオターゲティング広告に関心を持ちました。

当時、インバウンドの方だけに直接配信できるサービスはほとんどなく、それができるのがLocation AIでした。
問い合わせたときの対応も確かだったので、導入を決めました。

「その時その場所」ではなく、東京都内全域の訪日外国人へ配信

配信エリアはどのように決めましたか?

Location AI:

SSRIDEは渋谷発着のため、乗り場周辺に絞って配信するという選択肢もありました。
しかし、Location AIからは、訪日旅行者の行動特性を踏まえ、配信エリアを東京都内全域に広げることを提案しました。

訪日旅行者は「今日は浅草と池袋、明日は渋谷と新宿」というように都内を広く移動します。乗り場周辺に限定すると、ほかのエリアに滞在しながら翌日以降の観光予定を考えている旅行者に、広告を届ける機会を逃してしまうためです。

式守様:

Location AIのインバウンド広告では、位置情報データから推定した居住国と、日本国内での滞在状況をもとに、訪日外国人旅行者と推定されるユーザーへの広告配信が可能です。そのため、施策として乗り場周辺にいる旅行者だけでなく、東京都内のさまざまな場所を訪れている旅行者にもSSRIDEの存在を知ってもらうことを重視しました。

初めての取り組みでしたので、まずはやってみようという感覚でしたが旅行者の行動範囲は広いですし、渋谷はもともと立ち寄る方が多い場所です。都内全域に広く配信することに抵抗はありませんでした。

予約データをもとに台湾からの旅行者に注目。広告配信の見直しで反応を高める

台湾からの旅行者に注力したのはなぜですか?

式守様:

最初の3回、2025年6月から2026年2月までの配信では、国籍を限定せず、東京都内に滞在する訪日外国人旅行者を幅広く対象としていました。まずは、多くの旅行者にSSRIDEの存在を知ってもらうことを優先したかったからです。

その後、配信を重ねるなかで過去1年間の予約データを確認したところ、台湾からのお客さまが特に多いことが分かりました。一方で、訪日する台湾からの旅行者全体を考えると、SSRIDEを利用している方はまだ一部にとどまります。台湾からの旅行者には、さらに利用を広げられる可能性があると考え、重点的にアプローチすることにしました。

そこで、4回目となる2026年5月からは、配信対象を「台湾」と「その他の国・地域」の2つに分け、それぞれの広告の反応を比較できるようにしました。

2026年5〜6月の配信では、広告の表示回数がほぼ同じだったにもかかわらず、台湾向けの広告はその他の国・地域と比べてクリック率が高く、広告を見たユーザー数も2倍以上となりました。台湾からの旅行者に注力したことで、良い反応が得られたと感じています。

また、広告配信は運行スケジュールに合わせて調整し、運休日には配信を停止するなど、限られた予算を有効に活用するための工夫も行っています。2025年6月の開始以来、季節を変えながら配信を実施してきました。

項目当初の配信2026年5月からの配信
配信対象東京都内に滞在する訪日外国人全般台湾とその他の国・地域を分けて配信
主な目的SSRIDEの認知拡大台湾からの旅行者の反応を個別に把握
改善の根拠幅広い認知獲得を優先SSRIDEの予約データから台湾の需要に着目
確認できた反応国・地域横断で配信台湾向け広告のクリック率が比較的高い傾向

乗客ゼロの日もあった朝の便が改善。継続配信で見えた変化

配信の成果はいかがでしたか?

式守様:

乗車率は継続的に向上しています。特に変化が大きかったのが、新宿歌舞伎町から渋谷へ向かう「SHIBUYA CONNECTED ROUTE」の9時40分の便です。以前はあまり人気がなく、乗客がゼロの日もありました。それが最近では、多くのお客さまにご乗車いただける日が増え、利用が大きく改善しています。

広告の配信データを見ると、表示が最も多かったのは夜の20〜22時でした。観光を終えてホテルに戻った旅行者が、翌日の予定を考える時間帯です。前の晩に広告を見て知り、翌朝の便を予約する。そんな旅行者の動きと配信がうまく噛み合ったのだと考えています。

乗客の層に、何か特徴はありましたか?

式守様:

お一人での乗車はほとんどなく、ご夫婦や女性のグループが中心です。女性のほうが興味を持ちやすい傾向はあるかもしれません。

広告の反応を見ても、毎回45〜64歳の女性のクリック率が特に高く、冬の配信では4〜6%に達しました。実際に現場で見ている乗客層と、広告データの傾向が一致した形です。

なぜ配信を続けることが大切なのでしょうか?

式守様:

私たちが一番取り組みたいのは、SSRIDEというバスそのものの認知度を上げることです。乗車率の改善も、まず存在を知っていただくところから始まります。そのためには、広告配信を続けることが非常に重要だと感じています。配信を休むと、認知も利用も下がってしまうからです。

SSRIDEは、乗車中に撮る写真が景色だけになりがちで、このSSRIDE自体や、乗車中の様子が伝わる口コミが自然に広がりにくいサービスでもあります。自然な広がりを待つだけでは、認知度はなかなか高まりません。だからこそ、広告を活用し継続的にSSRIDEの存在・情報を届け続けることが欠かせないと考えています。

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インタビューの様子:東急バス株式会社 運輸事業部 計画部 恒吉 剛様(左)、式守 昇様(右)

冬場の集客対策と国内旅行者へのアプローチ

今後の展望をお聞かせください

恒吉様・式守様:

当面の間は、現行の内容で運行を継続する予定で、引き続き乗車率の改善に努めていきます。課題は冬場です。2024年の冬は乗車率が伸び悩んだため、2025年と2026年の年明けには配信を行いました。屋根のないバスなので、寒い時期はどうしても利用が落ち着く傾向があります。表参道のイルミネーションなど冬ならではの魅力も生かしながら、年末年始や冬場の対策を検討していきたいですね。

もう一つ力を入れたいのが、日本人のお客さまへのアプローチです。SSRIDEは、もともと日本人・外国人を問わず渋谷の回遊を促すために始めた定期観光バスです。インバウンドで手応えをつかんだ今、エリアで絞るだけでなく、観光や街歩き、アクティビティといった興味関心の高そうな日本人の方にも届けていきたいと考えています。

なかでも狙いたいのが、静岡県など少し遠方から東京に遊びに来る方です。都内に住んでいる方にとって渋谷は日常の街ですが、新幹線や高速バスで遠くから訪れる方は「せっかく東京に来たのだから」と観光を楽しむ気持ちが強く、乗っていただける可能性が高いと考えています。駅や高速バスとの連携、駅貼りなどほかの施策と組み合わせた配信も検討していきたいです。

おわりに:東急バスの事例から学ぶ、インバウンド広告の活用ポイント

東急バスの取り組みから見えてくるのは、訪日外国人の集客では、店舗や施設の周辺だけに配信エリアを限定せず、旅行者の移動や旅程の組み方を踏まえて広告を届けることの重要性です。

今回の事例では、東京都内に滞在する訪日外国人へ広くアプローチしながら、実際の予約データをもとに台湾からの旅行者への配信を強化しました。

また、夜間の広告表示が多かったことから、旅行者が翌日の観光予定を検討する時間帯に接点を持つことの可能性もうかがえます。

こうした取り組みを継続するなかで、利用が伸び悩んでいた朝の便にも改善が見られました。

観光施設や商業施設、交通・レジャー事業者にとっても、訪日外国人の行動特性に合わせた配信エリアの設計と、実際の利用データを踏まえたターゲットの見直しは、集客施策を考えるうえで参考になる取り組みです。

Location AIでは、グローバルな位置情報データを活用し、訪日外国人の行動分析から広告配信、効果検証まで、一貫したインバウンドマーケティングを支援しています。

取材協力

東急バス株式会社
運輸事業部 計画部
式守 昇 様 / 恒吉 剛 様
※本記事の制作にあたり、インタビューおよび写真提供にご協力いただきました。

 Location AI株式会社 マーケティングチーム
Location AI株式会社マーケティングチーム

Location AI株式会社は、位置情報ビッグデータとAIテクノロジーで、実世界の人流データ活用を推進するロケーションテック企業です。 独自のAI解析エンジン「Location Engine™」を基盤に、2018年(旧クロスロケーションズ創業)より人流データ事業を展開。データの分析・可視化からプロモーションの実施までを一気通貫で実現し、ビジネスの成長から社会課題の解決まで幅広く支援しています。 本ページは、民間企業や自治体、報道機関など、幅広い分野へのデータ分析支援を通じて蓄積した知見をもとに執筆・更新しています。

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