「便利だから」と、よくわからないままアプリの位置情報を「許可」していませんか?
あるいは、プライバシーへの不安から「不要なアプリをオフにしたいけれど、どう設定すればいいかわからない」と迷っている方もいるかもしれません。
位置情報が取得される仕組みを正しく理解し、ご自身に合わせて適切に設定することは、プライバシーを守るだけでなく、より快適な社会のサービスを安心して利用するための第一歩となります。
本記事では、不要な位置情報を見直す方法や、プライバシーを守りながらスマートに活用するコツをわかりやすく解説します。
スマートフォンの位置情報に関する不安
スマートフォンの位置情報は地図やカーナビ、タクシー配車、友人との待ち合わせ、子どもの見守りなど様々な用途に役立ちます。一方で、近年はスマートフォンから収集される位置情報ビッグデータをもとに生成された「人流データ」の活用が進んでおり、「アプリから収集された位置情報をもとに自分の居場所や生活パターンが第三者に知られてしまうのでは?」と不安を感じている人もいるのではないでしょうか。
位置情報は、その仕組みを理解して正しく取り扱えば、悪用されるリスクを大幅に減らすことができます。まずは、スマートフォンがどのように位置情報を取得しているのか、その仕組みから詳しく見ていきましょう。
位置情報の取得方法とアプリの仕組み
スマートフォンで位置情報を取得する方法としては、主に以下のような方法があります。

▼GNSS(全球測位衛星システム)
人工衛星から送信される電波を受信してスマートフォンの位置を推定する技術で、最低4機の衛星からの信号を受信することで測位できます。米国のGPSや日本のQZSS(準天頂衛星「みちびき」)、欧州のGalileo、ロシアのGLONASS、中国のBeidou(北斗)、インドのNavICなど様々な国や地域のシステムがあります。
測位精度は数メートルから数十メートル以内で、全世界どこでも測位できますが、高い建物に囲まれた場所や屋内・地下では電波が届きにくく精度が低下します。空が開けた場所では精度が高いため、スマートフォンのアプリから収集される位置情報はGNSSによって得られたデータを基にしている場合が多く、人流データとして活用されるほか、ナビゲーションや見守りサービス、紛失物の位置特定、位置情報ゲームなど様々な用途に活用されます。
▼基地局測位
スマートフォンが通信キャリアの基地局と通信することで、ユーザーがどの基地局の周辺にいるかを把握し、位置情報として活用できます。GNSSに比べると精度は低いですが、屋内や地下などGNSSが使えない環境でも位置情報を取得できます。通信キャリアは基地局ごとに現在何台の端末がエリア内に存在するのかを把握し、このデータをもとにした人流データを提供している場合もあります。
▼Wi-Fi
街中にあるWi-Fiアクセスポイントの情報を活用して、そこに接続したスマートフォンの情報をもとに位置情報を取得することができます。Wi-Fiアクセスポイントがある場所であれば屋内や地下でも位置を推定できますが、山間部などアクセスポイントが無い場所では利用できません。地図アプリなどにおいて世界中のWi-Fiアクセスポイントの位置のデータベースをもとに現在地を推測する場合と、公衆Wi-Fiサービスに接続した端末の情報がGNSSによる位置情報ビッグデータと組み合わせて人流データとして活用される場合があります。
▼ビーコン
店舗などに設置されたBLE(Bluetooth Low Energy)ビーコンの情報を活用して、そこに接続したスマートフォンの情報をもとに位置情報を取得することができます。店舗アプリのチェックイン機能やクーポン配信機能に利用されています。Wi-Fiと同様に山間部などアクセスポイントが無い場所では利用できません。公衆Wi-Fiサービスと同様に、ビーコンに接続された端末の情報はGNSSによる位置情報ビッグデータと組み合わせて人流データとして活用されています。
※上記の位置情報の取得方法の中で、どれを利用するかはアプリやサービスによって異なります。
位置情報の取得はアプリベンダーが直接行う場合もあれば、位置情報の収集機能を備えたSDK(ソフトウェア開発キット)を利用して開発されたアプリの場合はSDKが収集する場合もあります。
また、携帯電話の基地局測位の場合は通信キャリアが位置情報を収集・蓄積するなど、その取得方法は様々です。
位置情報に関するセキュリティの設定方法
日本では、ユーザーが位置情報の収集や利用を事前に同意した場合にのみ位置情報が利用される『オプトイン方式』が義務化されており、アプリ利用時に「“○○○(アプリ名)”に位置情報の使用を許可しますか?」といった質問が表示されます。
iOSとAndroidいずれの場合でも、位置情報の設定画面において、位置情報を利用するアプリのリストの一覧を確認できます。このリストを見ると、普段は意識することは少ないですが、実は多くのアプリで位置情報を利用していることがわかります。
位置情報の設定は、iOSの場合は「(許可)しない」「常に(許可)」「次回または共有時に確認」「このアプリの使用中(は許可)」の4択で、Androidの場合は「常に許可」「アプリの使用中のみ許可」「毎回確認する」「許可しない」の4択で、利用開始後もアプリごとに個別に設定することができます。
以下に、iOSとAndroidそれぞれの位置情報の設定方法を詳しく紹介します。
▼iOS(バージョン26.4)
[設定]>[プライバシーとセキュリティ]>[位置情報サービス]の画面で最上部の[位置情報サービス]をオフにすると全てのアプリにおいて位置情報の利用が無効になります。
ただし「iPhoneを探す」アプリを利用して紛失モードを有効にする場合は、同アプリの位置情報サービスの個人設定は一時的に復元されます。
[位置情報サービス]を有効にした場合、位置情報を利用するアプリのリストが表示され、アプリごとに位置情報の利用の許可について[しない][次回または共有時に確認][このアプリの使用中][常に]から選択できます(アプリによっては選択肢が少ない場合もあります)。また、位置情報の利用を許可した場合、メニュー下部の[正確な位置情報]をオフにすると、アプリはおおよその位置情報しか取得できなくなります。

▼Android(バージョン16)
[設定]>[位置情報]の画面で[位置情報を使用]をオフにすると、全てのアプリにおいて位置情報の利用が無効になります。[位置情報を使用]をオンにした場合、[アプリへの位置情報の利用許可]をタップすると、位置情報を利用するアプリのリストが表示されます。
アプリごとに位置情報の利用の許可について[常に許可][アプリの使用中のみ許可][毎回確認する][許可しない]から選択可能で、メニュー下部の[正確な位置情報を使用]をオフにするとアプリはおおよその位置情報しか取得できなくなります。
[設定]>[位置情報]>[位置情報サービス]のメニューでは、
位置情報に関連するさまざまな機能の有効・無効を切り替えることができます。

Googleロケーション履歴
訪れた場所やルートが自動的に保存されるタイムラインの有効・無効を切り替えることが可能です。
Google現在地の共有機能
指定した相手に対して自分の現在地をリアルタイムで共有できる機能を切り替えられます。
タイムライン
タイムラインの表示や削除、データのエクスポートを行えます。
位置情報の精度
オンにすると位置情報の精度が向上し、その情報がアプリやサービスの位置情報を利用した機能に使用されます。
信頼できる場所
セキュリティレベルを高める必要があるかを判断するために、自宅やオフィスなど信頼できる場所を登録できます。デバイスが信頼できる場所から離れている場合、設定によっては本人確認のために追加の手順が必要となります。
地震アラート/災害情報アラート
おおよその現在地に基づいて地震や災害に関する通知を受け取ります。
緊急位置情報サービス
緊急位置情報サービスがデバイスに対応している場合に、緊急通報番号に電話をかけるかテキストメッセージを送信するとデバイスの位置情報とその他の情報が緊急サービスに自動的に送信されます。
Wi-Fiをスキャン/Bluetoothをスキャン
アプリやサービスに対してWi-FiやBluetoothがオフの場合でも、常にWi-Fi/Bluetoothの電波をスキャンすることを許可します。

位置情報を使用するメリットとデメリット
利便性を最大化する「オン」のメリット
以上のように、iOSとAndroidのいずれにおいても、アプリごとに位置情報の使用を許可するかどうかを細かく設定することができます。位置情報をオフにすればOSやアプリの提供者に位置情報が送信されることは無くなりますが、例えば地図アプリやカーナビアプリであれば自分の現在地が地図上に表示されなくなり、使い勝手が大幅に下がってしまうので現実的ではありません。
他にも、移動することでポイントを取得できるアプリや位置情報ゲーム、友人同士で位置情報を共有するアプリなど、ユーザーが位置情報を使用することを前提としたアプリは数多くあり、このようなアプリの場合は利便性を優先して位置情報の機能をオンにすることをおすすめします。
「位置情報 アプリ 漏洩」などのリスクに備える
ただし、位置情報共有アプリの場合は、知人や友人に対して位置情報を公開したままでいると、意図せず自宅や会社などの場所を知られてしまう恐れもあるので、使い終わったら位置情報の使用をオフにするなど注意が必要です。また、カメラアプリで位置情報の使用をオンにした状態で撮影すると、写真に撮影場所の位置情報が付与され、その写真をSNSなどで公開した場合に自宅などが特定されてしまう恐れがあるため、不安に思う人はカメラアプリの位置情報の使用をオフにしておいた方が良いでしょう。
「おおよその位置」でGPSデータ プライバシーを守る
位置情報の使用をオンにした上で、取得する位置情報の精度を変更しておおよその位置しかわからないようにするという方法もあります。例えば飲食店公式アプリにおいて現在地周辺の店舗を調べる機能を使いたい場合、おおよその位置情報を取得する設定にしても近隣の店舗を調べることは可能なので、不安な人は“正確な位置情報”をオフにしておくと良いでしょう。また、店舗検索の用途であれば常に位置情報を利用する設定にする必要もないので、不安であればアプリを使用するときだけ一時的に位置情報の使用をオンにするという手もあります。

目的に合わせた設定が重要
一方、子どもや高齢者の位置を把握する見守りサービスなどの場合は、追跡される側の端末はアプリを使用していないときでも常に位置情報を利用する設定にする必要があります。このように、位置情報の使用/不使用はアプリごとにそれぞれの利用目的に応じてメリットとデメリットを比べながら決めることが重要です。

あなたのデータが社会を変える?人流データの価値
なぜ多くのアプリが位置情報を求めるのでしょうか?
それは、個人の特定が目的ではなく、集計された「位置情報データ」が社会課題の解決に不可欠だからです。
- 防災: 災害時の避難経路策定や、混雑予測による事故防止
- まちづくり: 「ここにバス停が必要だ」「この交差点は危険だ」といった街の改善
- 利便性: 飲食店や商業施設の最適な出店計画
位置情報データが保護された上で統計的に活用されることで、私たちの街はより便利になっていきます。
■個人の特定を防ぐための技術
位置情報データ 保護と匿名化の仕組み
位置情報を使用する設定にした場合においても、アプリベンダーや位置情報SDKの提供会社は、収集した位置情報ビッグデータをもとに人流データを生成する際に、個人を特定されないように匿名化処理※1や「拡大推計」と呼ばれる統計処理などを行うため、個人の特定は極めて難しいです。
事業者が人流データを利用する目的は個人を特定することではなく、あくまでも全体的な人の流れの動向を分析することなので、収集された位置情報が不正に利用されるリスクを過度に恐れる必要はありません。
※1. 匿名化処理とは、特定の個人を推測できないようにIDを削除したり、位置や時刻の精度を低減させたり、対象者数が少ない位置情報データの場合は削除したりする処理で、個人のプライバシーを保護する目的で行われます。拡大推計処理は、位置情報の実測データをもとに、居住者の人口などのデータと組み合わせることによって全体の移動や滞留の状況を推計する処理で、これにより広範囲における大局的な人の動きを分析することが可能となります。
位置情報データ 個人情報の厳格な切り離し
なお、たとえすべてのアプリで位置情報を使用しない設定にしたとしても、モバイルデータ通信を行う設定にしている限りは基地局との通信が行われ、携帯電話キャリアはどのスマートフォンがどの基地局の圏内に存在するのかを把握することが可能となり、完全に自分の位置情報を秘匿することは難しいです。
キャリアによっては各基地局のエリアごとに所在する携帯電話の台数を集計して地域ごとに人口を推計して人流データとして提供している企業もあります。ただし、その場合でも匿名化処理や統計処理が行われるため、やはり個人が特定されるリスクを過度に恐れる必要はありません。
正しい知識を得て快適なスマホライフを

ユーザーの同意(オプトイン)が大前提
これまでの解説の通り、位置情報はスマートフォンアプリを使用するだけで、ユーザーに断り無く勝手に収集されるわけではありません。位置情報の使用については事前に許諾するかどうかの確認が表示され、後からでもアプリごとに自由に設定を変更できます。そしてユーザーの許可を得た場合のみデータが収集され、人流データとして様々な企業や自治体の課題解決に活用されます。
安心と便利さのバランスを見つける
位置情報の使用・不使用はアプリごとに細かく設定できることに加えて、位置精度を曖昧にすることも可能なので、ユーザーとしてはアプリの利用目的にあわせて最適な設定を行うことが大切です。また、仮に位置情報を収集されたとしても、位置情報を取り扱う企業は徹底した情報管理を行っており、人流データとして外部に提供される場合には匿名化処理や統計処理が行われるため、むやみに個人が特定される心配は少ないので安心してください。
位置情報の収集や活用に関する知識を正しく知った上で、アプリの使い勝手とのバランスを考えながら適切なセキュリティ設定を行うことにより、安心で快適なスマホライフを送ってください。
