スタジアムの波及効果を人流データで可視化。試合日の賑わいは「地元への還元」につながっているか?

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執筆者 吉永倫久
スタジアムの波及効果を人流データで可視化 | スタジアムの波及効果を人流データで可視化。試合日の賑わいは「地元への還元」につながっているか?

スタジアムでサッカーの試合があった日、周辺の飲食店や商業エリアが賑わった
その実感は担当者の間で共有されていても、
どのエリアに、どれだけ人が流れたか」をデータで示せている施設は多くありません。

地域経済への貢献を「感覚値」でしか語れない状況は、次年度の予算獲得やスポンサー企業への報告、地元商店街との連携協定といった重要な場面で、説得力を持たせきれないという課題を生みます。

エリアマネジメント団体や商工会議所からも「賑わいの手応えはあるが、具体的な数字で示せないため協力を引き出しにくい」という声を現場でよく耳にします。

本記事では、スタジアムやアリーナの試合開催が地域にもたらす経済波及効果を人流データで可視化する考え方と、だれでも始められる実際の分析手順を長崎スタジアムシティの分析事例も交えながら解説します。 

「感覚値」を「説得力のあるデータ」に変え、関係者とのスムーズな連携づくりを進めるためのヒントとして、ぜひお役立てください。

📌 本記事で解決できること
  • ・試合開催日に周辺エリアへどれだけの経済波及があったかをデータで把握する方法がわかる
  • ・「遠くから来た」「地元の店に立ち寄った」という実感をデータで証明する具体的な手順がわかる
  • ・行政・議会への報告・補助金申請に使えるデータの作り方がわかる
  • ・長崎スタジアムシティの分析事例から、自施設への応用イメージをつかめる
INDEX

「賑わった実感」がデータにならない理由

スタジアムの入場者数は、チケット販売や入場ゲートの記録で正確に把握できます。
しかし、ひとたびゲートの外へ出ると、状況は一変します。

・どの飲食店に立ち寄ったか
・宿泊施設を利用したか
・商業施設を回遊したか


こうした来場者の「見えない足取り」を追う手段が、多くの施設や自治体には整備されていません。

これまで、周辺エリアへの波及を測る手段といえば、アンケートや現地での聞き取り調査が主流でした。しかし、これらのアナログな手法は「手間やコストがかかる」「一部の回答(サンプル)に偏りやすい」といった弱点があり、毎試合継続してデータを取るのは現実的ではありませんでした。

「街が賑わっている実感はあるのに、定量的なデータで証明できない」
現場の担当者を悩ませてきたこの問題は、まさにデータを取得する手段の限界から生じていたのです。

こうした長年の課題を解決するブレイクスルーとして注目されているのが、「人流データ」です。

スマートフォンの位置情報などを匿名化して解析するこの技術を使えば、従来は追えなかった「来場者が試合前後にどのエリアを移動し、どこに立ち寄ったか」というまち全体の人の動きを、客観的なデータとして可視化できるようになりました。

課題従来の方法の限界人流データによる対応
波及エリアの把握アンケートでは誰がどこへ行ったか追跡が困難来場者が試合前後にどのエリアへ移動したか地図や場所で可視化
来場者の出発地チケット購入データのみ
(会員以外は不明)
居住地・出発圏を匿名データで推計
経済波及の定量化消費額推計は仮定が多く精度が不安定試合日vs非試合日の来訪者数差分で比較
継続的なモニタリング毎回アンケートを実施する手間とコストがかかる試合ごとに継続的なモニタリングが可能 ※過去の分析も可

人流データで測れる「波及効果」とは

スタジアムの波及効果を人流データで捉える場合、主に3つの視点から分析します。

人流データで測れる波及効果 | スタジアムの波及効果を人流データで可視化。試合日の賑わいは「地元への還元」につながっているか?

① 来場者の出発地分析:どこから来た人が来ているか

来場者が「どこから来た人か(居住地・出発地)」を、町丁目〜都道府県単位で把握することで、そのスタジアムがどの範囲から人を集めているかが分かります。地元市民が中心なのか、県外や広域からの来場者が多いのかによって、地域経済への影響の性質が変わります。

遠方からの来場者が多いほど、地域外からの「外貨獲得」としての経済効果が大きくなります。また、広域から来た人が宿泊を伴う可能性が高く、飲食や観光消費への波及も期待できます。

来場者の出発地分析どこから来た人が来ているか | スタジアムの波及効果を人流データで可視化。試合日の賑わいは「地元への還元」につながっているか?

② 試合後の回遊先分析:地元の店に立ち寄ったか

来場者が試合後にどの施設・エリアへ立ち寄ったかを把握するのが、波及効果分析の核心です。
スタジアムの周辺に位置する飲食店・商業施設・宿泊施設への来訪が、試合開催日に増加しているかどうかを確認します。

ここでは、人流データ活用プラットフォームに搭載されている機能を使い、来場者が併用している施設をランキング形式で可視化できます。たとえば、「スタジアムに来た人が試合後に多く立ち寄る場所トップ10」のような形で結果を提示できるため、行政への報告やスポンサー提案の資料としてもそのまま活用しやすくなります。 ※スタジアム来訪者の位置情報から周辺区域内で発信されるGPS信号を基にAIで解析。

試合後の回遊先分析地元の店に立ち寄ったか | スタジアムの波及効果を人流データで可視化。試合日の賑わいは「地元への還元」につながっているか?

③ 試合日・非試合日の比較:どれだけ変化したか

波及効果の「大きさ」を測るには、比較の基準が必要です。試合が行われた日と、同じ曜日・季節帯で試合がなかった日の周辺エリア人流を比較することで、試合開催による増分を推計します。

試合開催日は周辺エリアの来訪者数が非開催日比で◯%増加した
という形で提示できると、数値の根拠が明確になります。

試合日非試合日の比較どれだけ変化したか | スタジアムの波及効果を人流データで可視化。試合日の賑わいは「地元への還元」につながっているか?

 長崎スタジアムシティの事例:人流分析で何が見えたか

ここまで、人流データで測れる3つの波及効果(出発地・回遊先・比較)について解説してきました。
では、この仕組みを実際の現場に当てはめると、街の賑わいはどのように可視化されるのでしょうか?具体的なイメージを掴んでいただくために、ひとつの事例をご紹介します。

舞台となるのは、2024年10月に開業したスタジアムを中核とする複合施設「長崎スタジアムシティ」です。プロサッカークラブ「V・ファーレン長崎」のホームスタジアムとして、試合開催日には多くの来場者が訪れます。

この場所で開業1周年を迎えた時期に、周辺エリアの人流にどのような変化をもたらしているかを探るデータ分析が実施されました。「スタジアムの来訪者がどこから来て、試合後にどこへ流れているのか」という実態をデータで分析した事例として、その要点を見ていきます。

人流分析で何が見えたか_長崎スタジアムシティの事例 | スタジアムの波及効果を人流データで可視化。試合日の賑わいは「地元への還元」につながっているか?

📰 NiB長崎国際テレビ「news every.」で報道(2025年10月)

この分析結果は、長崎スタジアムシティの開業1周年を特集した報道番組でも取り上げられました。スタジアム来訪者の来場エリアや回遊傾向のデータが、「街の賑わいがどう変化したか」を裏付ける客観的な根拠として活用されています。人流データが、公共性の高い説明の場でも確かな説得力を持つことがわかる事例です。 

人流分析で把握できた主な内容

事例では、人流データを活用し、次のような観点からスタジアムと地域の関係を整理しています。

分析の視点把握できた内容
来場者の出発地長崎市内だけでなく、県内各地・県外からの来場者の比率と出発エリアの分布
試合後の回遊先スタジアム周辺の飲食店・商業エリアへの来訪状況と立ち寄り傾向
試合日vs非試合日試合開催日と非開催日での周辺エリアの来訪者数の変化
時間帯別の動き試合終了後に周辺への人流がどの時間帯にどう広がるか

こうした分析結果は、「試合を開催することで、地域がどう変わっているか」を客観的に示す材料になります。また、スタジアムの運営者にとっては地域連携の説明根拠に、自治体にとっては施設への支援・連携施策の根拠に、それぞれ活用できます。

【コラム】まちづくり全体への波及効果測定 | 日本橋兜町の事例

波及効果の可視化は、スタジアムに限らず、エリア再生・まちづくりのプロジェクト全般に応用できます。特定のコンテンツや施設の開設が、周辺の街にどのような変化をもたらすかを継続的に測定する枠組みとして機能します。

まちづくり全体への波及効果測定 | スタジアムの波及効果を人流データで可視化。試合日の賑わいは「地元への還元」につながっているか?

📰 日本橋兜町エリア再生と人流の変化を時事ドットコムが報道(2026年3月)

かつての証券街から、カフェ・ホテル・スタートアップ拠点などが集まる複合的なエリアへと
再生を続ける日本橋兜町。人流データを用いることで、エリア再生の取り組みが実際の来訪者数や滞在傾向の変化にどう表れているかが分析されました。

スタジアムの試合開催日に人が増える現象も、エリア再生によって来訪者の属性や滞在時間が変わる現象も、施策の前後で街がどう変化したか」を記録・比較するという点ではまったく同じ構造です。

人流データを用いた波及効果測定の進め方

実際に人流データを活用して試合やイベントの波及効果を可視化するための方法として、
大きく4つのステップに分けた分析手順をご紹介します。

人流データを用いた波及効果測定の進め方 | スタジアムの波及効果を人流データで可視化。試合日の賑わいは「地元への還元」につながっているか?

STEP 1:分析地点(POI)の設定

スタジアム本体に加え、波及効果を測りたい周辺エリア(飲食店が集まる通り、商業エリア、最寄り駅周辺など)も分析対象として設定します。複数地点を同時に分析できる環境を整えることで、試合後の人の流れを立体的に把握できます。

STEP 2:試合日・非試合日の比較分析

試合開催日と、同曜日・同時間帯の非開催日を比較します。スタジアム周辺の各エリアで来訪者数がどう変化したかを地図上で確認し、波及の範囲と規模を把握します。
※LAPの「期間比較マップ」を使い分析。

STEP 3:来場者の出発地分析

来場者の居住地・出発地の分布を確認します。地元(市内)と広域(県内他市・県外)の比率を把握することで、そのスタジアムが「地域密着型」なのか「広域集客型」なのかの性質が分かります。
※LAPの「来訪者出発圏比率」「都道府県別来訪比率」で分析

STEP 4:回遊先の特定

来場者がスタジアムの来場前後に立ち寄っている施設やエリアを把握します。試合後に向かう飲食店や商業施設のランキングなどを把握することで、どのエリアへの経済波及が大きいかが見えてきます。
※LAPの「Hot Placeランキング」「併用傾向分析」で分析

データをどう活用するか | 施設・自治体・スポンサーそれぞれの使い方

データをどう活用するか施設自治体スポンサーそれぞれの使い方 | スタジアムの波及効果を人流データで可視化。試合日の賑わいは「地元への還元」につながっているか?

施設運営者:試合日設定・動線設計への反映

どの曜日・時間帯の試合で来場者が多く、周辺への波及も大きいかが分かれば、試合日程の設定や、スタジアム周辺の飲食・商業との連携企画を組み立てる際の判断材料になります。試合後の人の流れが集中する方向に向けて、テナントや導線の配置を検討することもできます。

自治体・エリアマネジメント団体:行政説明・補助金申請への活用

議会や上位機関への報告、補助金申請などの場面では、「スタジアムを支援することで地域にどれだけの経済波及があるか」を数値で示せることが重要です。試合日の周辺エリア来訪者増加率や、広域来場者の比率などを「地域外からの人の誘致効果」として提示できます。

エリアマネジメント団体が「賑わいを定量化したい」という課題を抱えているケースでも、人流データによる継続的なモニタリングは有効な手段になります。

スポンサー企業への提案:広告価値の定量化

来場者の属性(年代・性別・居住エリア)と、試合後の回遊先データを組み合わせることで、「スタジアムに広告を出すことでどんな層に、どの場面でリーチできるか」を具体的に示せます。来場者数だけでなく、属性・行動データを根拠にした提案は、スポンサーシップの継続・新規獲得に向けた説得力を高めます。

まとめ

スタジアムの試合開催が地域にもたらす影響は、実感としては多くの関係者が感じているものです。
それをデータで裏付けられるようになることで、施設運営・地域連携・行政説明のそれぞれの場面で、より根拠のある議論が可能になります。

「遠くから来た」、「地元の店に立ち寄った」
—この2点を人流データで可視化することが、波及効果測定の出発点です。

💡 波及効果の可視化でできること(まとめ)

✅ 試合日・非試合日の比較で、開催による来訪者増加を定量化
✅ 来場者の出発地分析で、広域集客の実態を把握
✅ 回遊先(Hot Place)分析で、地元への経済波及エリアを特定
✅ 継続モニタリングで、季節・対戦カード別の波及傾向を蓄積
✅ 行政報告・補助金申請・スポンサー提案の根拠データとして活用

波及効果測定に使うLAPの主要機能について

最後に、本記事で利用した人流データを活用した分析プラットフォーム
「Location AI Platform®(LAP)」の機能をご紹介させていただきます。

波及効果測定に使うLAPの主要機能 | スタジアムの波及効果を人流データで可視化。試合日の賑わいは「地元への還元」につながっているか?

■ Hot Placeランキング / 併用傾向分析
 来場者が試合後に立ち寄った施設・エリアをランキング形式で可視化。
 「スタジアム来場者が多く立ち寄る場所トップ10」を数値で提示できます。

■ 期間比較マップ
 試合開催日と非開催日を比較し、周辺エリアの来訪者数変化を地図上で表示。
 波及の「範囲」と「規模」を把握するための基本機能です。

■ 来訪者出発圏比率 / 都道府県別来訪比率
 来場者の居住地・出発地を都道府県〜町丁目単位で把握。
 広域からの来場者比率を定量化し、地域外誘致の効果を示します。
 (人流アナリティクス®ツーリズムでも都道府県別・市区町村別来訪比率を利用可能)

■ エリア密集マップ / バードアイ人流(俯瞰)
 スタジアム周辺エリア全体の賑わいの変化を俯瞰的に把握。
 エリアマネジメント区域全体の報告資料への組み込みにも有効です。

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Location AI Platform®サービス詳細

吉永 倫久
Location AI株式会社PR & Marketing Manager

Location AI株式会社にて、マーケティングおよび広報・PR業務を担当。 Webサイトおよびデジタル広告の企画・運用、コンテンツマーケティング、セミナー企画、プレスリリースの企画・発信、対外コミュニケーション、営業連携施策、CRM設計などを横断的に取り組んでいる。 位置情報ビッグデータを活用したソリューションの市場浸透に向け、BtoBマーケティングを軸とした情報発信を推進。 Location Techの価値を、分析ツールにとどまらない意思決定基盤として社会に伝えている。

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