東京での出店を加速させたい。
しかし、駅乗降客数が多いエリアや競合が少ない場所といった従来の指標でだけでは
「次に出すべき場所」を判断するには不十分です。
実際に多くのチェーン企業が直面するのは、
“競合店舗や既存店と食い合わない出店”をどう見つけるか という課題です。
本記事では、地方で約50店舗を展開する居酒屋チェーンA社が、東京23区での出店優先順位を再設計するにあたり、既存店舗に来店する顧客の推定居住地を人流データで分析し、町丁目別に来訪率から“未回収商圏”を可視化しました。さらに、出店余地を定量化し、分析から実行判断へ落とし込んだプロセスをご紹介します。
これらの分析は、単なる立地評価ではなく、
- 既存店の“実質商圏”を可視化
- 取り切れていないエリアを定義
- 出店余地を数値化
- 駅単位に再構成して実行判断へ
という出店における一連の意思決定プロセスを“経営指標”として設計する方法論になります。
1. なぜ東京出店は「後半戦」ほど難しくなるのか
東京に新たに出店計画している居酒屋チェーンA社が初期に出店していたころは、
ターミナル駅や繁華街といった「分かりやすい立地」で出展を行っていました。
しかし、7店舗・10店舗と増えるにつれ、その判断が複雑になってきました。
- 既存店と商圏が重なっていないか
- 同じ顧客を取り合っていないか
- まだ取り切れていないエリアはどこか
など悩み事が増えていきます。
しかし、ここで重要になるのが、
既存店の“実質商圏”を正確に把握することです。

2. 人流データで既存店の“実質商圏”を可視化
今回の分析でA社は、既存7店舗に来店する顧客の推定居住地を人流データから分析し、
それぞれの店舗に来訪者が多いエリアを町丁目単位で可視化しました。
その結果、
- 来訪が集中しているエリア
- 想定より広がっている商圏
- ほとんど来訪がないエリア
といった、従来の立地指標だけでは把握しづらい情報が明らかになりました。
特に重要なのは、最寄り駅単位ではなく、顧客が実際に暮らしているエリアを町丁目単位で捉えられる点です。これにより、駅勢圏という“交通単位”ではなく、生活圏という“居住単位”で分析することで、駅の印象や乗降客数では見えなかった住宅集積地の“取りこぼし”が浮かび上がってきます。
つまり、「人が多い場所」ではなく、“自社がまだ十分に接点を持てていない場所” が明確になります。
こうして抽出されたエリアの中に、人口データだけでは見つからない“未回収商圏”が存在するのです。

3. 未回収商圏(空白地帯)の定義
しかし、可視化しただけでは、出店判断にはまだ使うことができません。
重要なのは、どこを“狙うべき未回収商圏”と定義するかです。
居酒屋チェーンを展開するA社は、未回収商圏を以下の3条件で定義して分析を行いました。
条件① 既存店への来訪率が低い
→ まだ十分に顧客化できていない
条件② 人口規模が一定以上
→ 市場として成立する
条件③ ターゲット比率が高い
→ サラリーマン・管理職・専門職などの比率が高い
この中でも、最も重要なのが「来訪率(どの程度の割合の人が実際に訪れたかを示す指標)」です。
理由として、人口が多くてもすでに既存店へ一定割合が来訪している場合、
追加出店は商圏の奪い合い(カニバリゼーション)につながります。
一方で、人口が多くターゲット層も厚いにもかかわらず来訪率が低いエリアは、
潜在需要があるにもかかわらず未回収の状態といえます。
ここに来訪率(一定期間内に対象エリアの居住者のうち何%が来訪したかを示す指標)を掛け合わせることで、「需要は存在するが、まだ自社が取り切れていないエリア」
を定量的に抽出できるようになります。
これが、感覚ではなくデータで空白地帯を定義するアプローチです。

4. 出店余地をスコア化する
これまでに抽出した未回収商圏をさらに比較可能にするため、
本件の分析では、候補地を横断的に評価する指標を以下に設計しました。
出店余地スコア =
(人口 × ターゲット比率) ÷ 来訪率
このスコア(出店地評価)は、エリアごとの「未回収ポテンシャル」を数値化したものです。
スコアが高いエリアほど、
- 市場規模がある
- ターゲットが多い
- しかし既存店に来ていない
という特徴を持ちます。
つまり、”需要の密度に対して、現在の取り込み率が低いエリア”を意味します。

このようにスコア化することで、これまでの「なんとなくな有望」ではなく、
東京23区内の町丁目を同一基準で比較し、優先順位をつけることが可能になります。
さらに、出店戦略は「候補を挙げることよりも、絞り込むことの方が難しい。」
そういった声を解決する糸口として
人流データを活用したスコア設計は、今後の判断を決めるための軸になります。
5. 象徴的だった江東区エリアの結果
人流分析の結果、江東区の特定エリアが高スコアであることがわかりました。
また、このエリアには、以下の特徴がありました。
- 大規模な住宅集積
- サラリーマン比率が高い
- 既存店への来訪率が低い
つまり、需要の土台は十分にあるにもかかわらず、
自社店舗の商圏がまだ届いていない状態でした。
これは偶然ではなく、
既存店来訪率という指標を掛け合わせたことで、人口情報などの印象論では見えなかった
「未接触エリア」が定量的に浮かび上がった結果を表します。
さらに重要なのは、町丁目単位で抽出した点です。
それは単に「江東区が有望」という粗い結論ではなく、
住宅集積が連続している具体的なエリアを特定できたことに意味があります。

その後は、この町丁目のデータを上記の図面のように駅勢圏単位へ再集約し、
- 空白地帯がまとまって存在するか
- 帰宅導線上に位置しているか
- 商業集積との接続があるか
といった実務観点を重ね、最終的な優先候補駅を特定しました。
データは出発点であり、
最終判断は事業戦略と接続して完成します。
6. なぜ従来の立地調査では見えないのか
まずは、従来の出店分析における情報を整理すると、主に以下の指標が用いられています。
- 乗降客数
- 人口
- 競合数
- 商業集積
これらは重要な基礎データですが、決定的に欠けている視点があります。
それが、「そのエリアの住民が、すでに自社店舗に来ているかどうか」という関係性の視点です。
乗降客数が多くても、既存店と商圏が重なっていれば追加出店は食い合いになります。
また、人口が多くても、既に来訪率が高いなら未回収余地は限定的です。
人流データによる来訪率分析を加えることで初めて、
- 既存店と補完関係になる出店
- 商圏を外側に広げる出店
- カニバリゼーションを抑制する出店
が設計可能になります。
ここに、人流データを用いる本質的な価値があります。

7. 人流データは「出店を経営指標化」する
今回の事例では、
- 既存店来訪率を町丁目単位で可視化
- 未回収商圏を定義
- 出店余地をスコア化
- 駅単位で優先順位順位を設定
というプロセスで、東京23区の出店余地を定量化しました。
現場に足を運んだ際に経験からくる印象については実際には重要な点ですが、
個人の感覚値で持つ 「有望そう」という状態は出来る限り排除し、
エリア間を同一基準で比較できる状態をつくったことです。
人流データは単なる位置情報ではありません。
出店を“再現性のある経営判断”へ変えるデータ基盤です。

本分析に活用したサービス
Location AI Platform®(LAP)
本事例の分析は、Location AIが提供する人流データ活用プラットフォーム
Location AI Platform®(LAP) を基に居酒屋チェーンA社が利用した事例としてご紹介を致しました。
LAPでは、
- 分析したい店舗・施設をピンポイント登録(POI分析)
- 来訪率の可視化
- 推定居住地分析
- 属性別構成分析
- エリア比較・期間比較
などをワンストップで実行できます。
もちろん、出店戦略だけでなく
- 商圏再定義
- 既存店のポテンシャル分析
- エリアマーケティング最適化
などの応用ににも活用可能です。
ご興味をお持ちの方は以下のバナーから製品情報やデモなどご相談ください。
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本記事で紹介した分析プロセスを、
図解・指標設計・実務手順まで整理した資料をご用意しています。
資料では、以下の内容を詳しく解説しています。
- 未回収商圏の設計方法
- 来訪率の算出ロジック
- 出店余地スコアの具体例
- 駅単位への落とし込み方法
- 出店判断で陥りやすい失敗例
「自社の既存店データでも同じ分析ができるのか?」
とお考えの方は、ぜひご覧ください。
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