GPSの精度はどれくらい?【GNSSの仕組みと測位誤差】人流データ活用のための基礎知識

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執筆者 片岡 義明
GPSの精度はどれくらい?【GNSSの仕組みと測位誤差】人流データ活用のための基礎知識

本記事は、「GPSの精度は何メートルなのか?」、「人流データはどの程度の位置誤差を含むのか?」といった疑問をお持ちの方に向けて解説します。

現代のスマートフォンやカーナビは、端末や機器に内蔵されたGPS受信機により位置情報を取得しています。取得された位置情報データは、人流分析やエリアマーケティングなど、さまざまな分野で活用されています。

人流データを活用するために知っておくべきGPSおよび各種GNSSの仕組み、測位精度に影響を及ぼす要因、そして高精度測位技術(RTK、CLAS/SLAS測位など)について解説するとともに、日本独自の衛星測位システム「みちびき」の最新動向についても詳述します。

■ピックアップ情報

Q. GPSの誤差はどのくらいありますか?
A. 一般的なスマートフォンでは数m〜30m程度の誤差が生じるとされています。
 ※利用環境や衛星の受信状況によって精度は変動します

 一方で、RTK測位やCLAS測位などの測位方法(高精度測位技術)を用いることで、
 
数センチメートル単位の高精度な位置情報をリアルタイムに取得することも可能です。

Q. GPSとGNSSの違いは何ですか?
A. GPSは米国が運用する衛星測位システムの名称で、GNSSはGPSを含む複数の衛星測位システムの総称です。

INDEX

GPSとGNSSの概要

まず、衛星測位システムの概要と、どのような仕組みで測位しているのかを解説します。

GNSSとは(全球測位衛星システムとは)

GNSS(Global Navigation Satellite System:全球測位衛星システム)とは、人工衛星を利用して地球上の位置を特定する衛星測位システムの総称で、位置情報の取得に欠かせない技術です。

一般的にGPS(Global Positioning System)という言葉が広く使われていますが、GPSは米国が運用する測位システムの名称です。一方、GNSSはGPSを含む包括的な概念であり、複数の国が運用する衛星測位システムの総称を指します。

米国のGPSのほか、欧州の「Galileo(ガリレオ)」、ロシアの「GLONASS(グロナス)」、中国の「BeiDou(ベイドウ)」、日本の準天頂衛星システム「みちびき」など、各国が独自の衛星測位システムを運用しています。

かつてはGPS単独利用が主流でしたが、近年では複数の衛星システムを組み合わせて利用する「マルチGNSS」が主流となっています。受信できる衛星の数が多いほど測位は安定しやすいため、多くのスマートフォンやカーナビはマルチGNSS受信機を搭載しています。

なお、日本が運用する独自のQZSS(準天頂衛星システム「みちびき」)は、地球全体をカバーしない地域限定の衛星測位システムですが、特にアジア・オセアニア地域においてGPSを補完する役割を果たしています。

みちびき(初号機後継機)
みちびき(初号機後継機)出典:みちびきウェブサイト(https://qzss.go.jp/)

GNSS(全球測位衛星システム)の仕組み

衛星測位は、人工衛星からの電波をスマートフォンなどのデバイスで受信することにより、受信した端末の位置を推定できるシステムです。ただし、衛星から送信された電波の中に位置情報が含まれているわけではありません。測位衛星から送信される電波信号には、時刻情報や衛星の識別コードが含まれているだけで、位置情報を計算する処理は地上の受信機側(スマートフォンなど)で行います。

位置情報の計算は、衛星から電波が送信された時刻と、受信時刻のわずかな差分から衛星と受信機の直線距離を求め、その距離を基に3つの測位衛星と受信機を結ぶ3本の直線が交差する点が地上の位置として求められます。なお、このとき受信機側の時刻誤差を補正する必要があるため、測位には最低4つの衛星が必要となります。

Global navigation satellite system (GNSS)

GNSSで居場所を知る方法

自分の位置に対して、頭上にどのような測位衛星が存在するのかを知りたい場合は、衛星配置表示アプリ「GNSS View」を利用することで確認することができます。このアプリは指定した時間や場所におけるみちびき(準天頂衛星)などのGNSS衛星の位置を表示しますが、表示される情報はスマートフォンが直接受信したものではなく、外部サーバーの情報に基づいています。

GNSS(Global Navigation Satellite System:全球測位衛星システム)View
GNSS View 出典:みちびきウェブサイト(https://qzss.go.jp/technical/gnssview/index.html)

マルチパスの影響

 GNSSによる測位は、高層ビルなど高い建築物に囲まれたエリアや山岳地帯などによる電波の乱反射が原因で衛星と受信機間での距離測定に誤差が発生することがあります。この乱反射の現象を「マルチパス」と呼びます。ほかにも、宇宙から地上へ電波が到達するまでの間に遅延が起こったり、信号減衰やノイズの影響を受けたりと、さまざまな原因で測位誤差が生じます。

マルチパスによって生じる誤差を最小限に抑えるためには、遮るものが少ない環境で、複数の衛星からの信号を受信することが重要です。現在、GPSやGLONASSなど、各国で多くのGNSS衛星が運用されています。

マルチパスによって誤差が生じる可能性があるため、GNSSによる測位は周囲に建物など遮るものが少ない環境のほうが誤差が少なく、正確な位置情報を得られる傾向があります。また、GNSSは受信できる衛星の数が多いほど測位が安定する場合が多く、各国とも多くの測位衛星を運用しています。
運用中のGNSS衛星の数は、2026年2月時点で、GPS、GLONASS、BeiDou、Galileo、NavIC、みちびきなど各国で多数の衛星が運用されています。衛星数は随時更新されるため、最新情報は各運用機関の公式発表をご確認ください。

マルチパスの影響
マルチパスの影響 出典:みちびきウェブサイトhttps://qzss.go.jp/)

GNSSの測位精度と補正技術

測位精度の基本

一般的なスマートフォンやカーナビに搭載されている単独測位のGNSS受信機では、数m~30mの精度の誤差が生じると言われています。ただし、カーナビアプリでは地図上の道路形状をもとに位置を補正する「マップマッチング」処理が行われるため、実際の位置により近い場所に表示位置を補正することができます。

高精度測位技術

これに対して、一般的な単独測位よりもさらに高精度な測位方式も存在します。
高精度測位の方式にはさまざまな種類がありますが、代表的な以下のような技術があります。

RTK(リアルタイムキネマティック)測位

 位置が分かっている基準局(既知点)と観測点で同時に観測し、基準局で観測したデータを観測点にリアルタイムに送信することでセンチメートル級の精度で測位することができます。また、電子基準点などの観測データをネットワーク経由で受信機に送信し補正する「ネットワーク型RTK測位」もあり、同様にセンチメートル級の精度を実現します。
近年では、携帯電話キャリアがモバイルネットワーク経由で補正情報を送るLTE-RTKという方式も普及しつつあります。

CLAS/SLAS測位

 CLAS測位(センチメータ級測位補強サービス)は、日本が運用する準天頂衛星「みちびき」から送信されるL6信号を受信することでセンチメータ級の測位精度を実現する方式です。SLAS測位(サブメータ級測位補強サービス)は、みちびきのL1S信号を受信することで約1m程度の精度で測位する方式です。
いずれもRTK測位とは異なり、基準局の設置やネットワークによる補正データ受信を必要としません。対応受信機のみで利用できるため、ランニングコストを抑えられる点が特徴です。

CLAS測位の仕組み
CLAS測位の仕組み 出典:みちびきウェブサイト(https://qzss.go.jp/

日本独自の衛星測位システム「みちびき」

初期4機体制とその仕組み

日本独自の衛星測位システムである準天頂衛星「みちびき」は、米国のGPSと互換性を持ちながら、GPS衛星の1つとして扱うことが可能で、日本を中心としたアジア・オセアニア地域においてGPSを補完する役割を担っています。

みちびきは当初、準天頂軌道3機と静止軌道1機による4機体制で運用が開始されました。準天頂軌道は地球を固定して見ると8の字を描くように移動し、日本上空で高仰角を長時間維持できる特性があります。

この構成により、日本では常に1機以上の衛星が仰角70度以上の位置に現れ、高仰角からの信号受信による測位安定性の向上が図られています。

GNSSにおいて位置を特定するために最低限必要な衛星の数は4機と説明しましたが、安定した位置情報を取得するためには8機以上の衛星が必要とされています。


みちびきは当初4機体制で運用が開始されました。現在は7機体制への拡充が進められており、段階的に衛星の打上げと整備が行われています。
日本のほぼ真上に滞在する時間を長くするために、初号機と2号機、4号機については、赤道上空を周回する静止軌道に対して、数十度傾斜させた「準天頂軌道」を採用しています。
準天頂軌道は、地球を止めた状態で見ると8の字を描くように動いて見えます。なお、みちびきの4機のうち、3号機だけは静止軌道を採用しています。

この準天頂軌道3機、静止軌道1機の4基体制により、準天頂軌道の3機が8時間ごとに順番に高仰角の位置に現れて、日本の空では少なくとも1機以上の衛星が常に仰角70度以上の天頂付近に位置することになります。これにより、高仰角からの電波送信が可能となり、マルチパスによる誤差が改善されることが期待できます。

また、衛星が特定方向に偏った状態で信号を受信するのではなく、広い範囲にまんべんなく配置されているほうが測位精度が高くなる傾向があるため、従来のGPSにみちびきが加わることで測位精度の向上も期待できます。

最新動向:7機体制への拡充

2025年2月2日には、種子島宇宙センターからH3ロケット5号機による準天頂衛星システム「みちびき6号機」が打上げられ、より安定した高精度測位環境の実現が期待されています。
そして、現在は7機体制への拡充が段階的に進められています。
7機体制が確立されることで、みちびき単独による安定的な測位環境の実現が期待されています。

拡充の意義

5号機以降には、新たな機能として衛星間測距機能(ISL:Inter-Satellite Link Ranging)および衛星/地上間測距機能が追加されます。これにより衛星の軌道および時刻情報の高精度化が図られ、将来的には対応端末においてメートル級精度のさらなる安定化が見込まれています。

今後の展望

7機体制が確立されることで、準天頂衛星単独による安定的な測位環境の実現が期待されているとともに、送信される信号の受信可能範囲が広がり測位精度も安定します。

これらの機能は、従来よりも高精度に機体の位置と時刻を特定し、それによってユーザー側の測位精度の向上を実現する技術で、将来すべてのみちびきの機体にこの機能が搭載された場合、スマートフォンやカーナビなど将来的には対応端末においてメートル級精度のさらなる安定化が見込まれています。

7機体制の運用により、みちびき単独での高精度測位も視野に入り、従来の補正技術との併用によって、さらなる精度向上や新たな応用分野への展開が期待されます。

みちびき6号機の特設サイトはこちらから

人流データの分析では、個々の端末の誤差をそのまま評価するのではなく、統計処理やAI解析によってばらつきを平準化することが重要です。

測位誤差を理解することは、データの限界を正しく把握し、適切な意思決定につなげるための前提条件です。

まとめ

 衛星測位は、その技術によって精度が異なりますが、人流データを扱う際には、一定の測位誤差が存在することを前提に考えることが大切です。

現在のGPSの精度としては、数m~30m程の誤差が生じる場合があります。一方、RTK測位やCLAS測位などの特殊な測位方法(高精度測位技術)を用いることで、数cm程度の誤差に抑えて計測することも可能です。

近年では、デュアル周波数GNSSに対応したスマートフォンや、外部補正情報と連携する技術も普及しつつあり、一般端末でもメートル級精度の安定化が進んでいます。

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片岡 義明

専門新聞社や出版社勤務を経て、1999年よりフリーランスライターとして活動。ITの中でも特に地図や位置情報に関することを中心テーマとして取り組んでおり、インターネットの地図サイトから測位システム、ナビゲーションデバイス、法人向け地図ソリューション、紙地図、オープンデータなど幅広い地図・位置情報関連トピックを追っている。測量士。インプレスR&Dから書籍「位置情報トラッキングでつくるIoTビジネス」、「こんなにスゴイ!地図作りの現場」、共著書「位置情報ビッグデータ」が発売。インプレスより書籍「パソ鉄の旅~デジタル地図に残す自分だけの鉄道記~」、共著書「いちばんやさしい衛星データビジネスの教本」が発売。地図と位置情報を中心としたニュースサイト「GeoNews」主宰。

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